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たとえば早朝の――ALL FAT LADIES
FAT LADYは、芝生の庭に座っています。億劫なため芝刈りはされていません。ところどころにはキノコのためフェアリーサークルができていて、それ以外の場所はただ自然のまま生い茂ってしまっています。FAT LADYはそのことにまったく無関心ですが、近所の人たちは時どきこういって笑い合うのでした。
「芝生ってあんなに伸びるものなんだねえ、知らなかったよ、まるで彼女のようにスクスクと育ってしまって!」
燦々と降り注ぐ五月の陽気は爽やかな風ともあいまって清々しいはずですが、肝心のFAT LADYはもう汗みずく。今朝も日に焼けてお尻の部分が伸びてしまったキャンバス地の椅子に、ギシリ、フゥと座ったのでした。FAT LADYはその椅子に座るたびにいつも独り言をいい(それは独特の節をつけて、まるで歌われるようです)、そして奇妙に唇をゆがめるのでした。
「伸びてしまって、キャンバスの目が、こんなに開いていても、私のお尻は、落ちはしません」
脇にある白いペンキの剥げた木製のテーブルに向けて反動をつけて伸び上がり、お気に入りのラジオを手に取ります。
さて。
今日もFAT LADYは夕暮れまでラジオを聴きます。汗を拭ってつまみを廻し、瞑目しながらも鮮やかに浮かび上がるのは少年のような少女のしかめっ面。大音量で流れるのはどうやらこんな曲のようです。
Everything I think is what I thought
Everything I thought is what I feel
Everything I feel is what I am