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ギミプナニー




 本日は私の友人について話をしてみようと思います。原稿用紙2枚ほどの トリップ を予定しています。

 そもそも私が彼と知り合ったのはプノンペンにおいてでした。そのころ頻発してあらわれていた強盗団に、持ち金もパスポートも何もかもをすっかり巻き上げられて蒼い顔をしていた彼に当座の金を貸したのが機縁でした。強盗団といいましても、昼は警察官らですので、被害を届ける先などありません。そのころの警察官は一ヶ月の給金が20ドル足らずでしたので、彼らは夜間のアルバイトである、強盗や麻薬の密売、ゆすりたかりで生活をしているのでした。ミスタープッシャーと私らが呼び習わしていた人物がありまして、彼も夜のアルバイトに精を出す警察官の一人だったのですが、彼自身絶対に逮捕されない身分であるのにも関わらず、あたりをギロギロギロギロ伺ってみては、怯えた表情でもって薄汚いトイレの中でしか取引をせず、時どきは客にしっかり ラムネ を掴ませるという念の入りようでした。たいへん面白い人物だったのですが、ミスタープッシャーについてはまたいつか機会があれば話してみようと思います。今日は私の友人の話です。
 私の友人はHさんといいました。

「昔やったら、さ。貴族やないと、さ。こなな遊びはできんとかって思わん? は?」
 と尻上がりの発音で言うのが彼の口癖でありました。スチームシュリンプを何度もお代りしてニンニクと青唐辛子の魚醤で喰うときもそうでしたし、モニボン通りの餃子館で山盛りになった うで 餃子を食べるときもそうでした。けれど、いちばん喜色満面となるのは、一発2ドルの安娼婦を5人も6人もベッドに上げるときでした。
 彼はEやシャブで縮こまってしまった芋虫のような、幼児のもののようなペニスをキリッと指差し、怖ろしく硬くこわばった、力の篭ったベトナム語で(メコン川流域から連れてこられる娼婦たちが相手でした。)ニャムニャム!ニャムニャム!(くわえろ!くわえろ!)と薬物的な影響で顎を信じられないような角度に曲げて叫ぶのでした。Hさんは私たち友人仲間にその姿を見せるのが何にも変えがたい楽しみのようでした。
「5番や8番やらな置屋れ、また引っ張ったたが、見にこいよ、夜。ええやろ」とHさんはほとんど顔見知りでしかなかったころにも、私を誘ってくれたのでした。

 アジアでは、シャブは普通赤い小さな錠剤として売られています。床に転がして、長くしたライターの炎で炙ってなまくらにした後で押しつぶし、小さく割ってから、スプーン状にしたアルミフォイルに細かな欠片をのせ、下から炙り、ペットボトルでつくった水パイプを使って喫煙します。それが通常の楽しみ方であるようでした。安娼婦たちは、煙になって体内に入る前に、冷えてストローにこびり付く、まっしろい粉を好みました。
 けれどもHさんはいつもバラ色に爛れてしまった毛むくじゃらの肛門に錠剤ごとブチこむのです。そして、ほとんど聞こえない声でキタキタキタキタと囁くのです。私たち友人仲間はそれを見て健気に笑ってあげていました。
 Hさんは、今でも貴族のような生活ができているのだろうか? 日本に帰国し不動産屋で営業の仕事をしているという彼を思い出すたびに私はそう考えます。忘れていましたが、Hさんはもう一つ口癖がありました。
「空港へえ行くやろ、そしたら派手な服着た人らがババーーンってゆうて出てきてな。むかあしでゆうたらサンドイッチーマーンズみたいな看板持ってえな、ドッキリでしたあーあははーあははーゆうてな、そんなふうして。びっくりしたり、笑いあったりしてなんやしらん、哀しいになりそうな気ぃせえへん?」
 いつも尻上がりだったHさんの語調はこのときばかりは少し下がり気味でありました。



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